屠場という職場 ドキュメント 屠場 (岩波新書)
食卓に並ぶ肉料理、牛も豚もみな当たり前のことだが、生まれながらにしてあのような「食料」
という形をしていたわけではない。皆全て、人による労働の所産であり、そこには生命の死と
いうものが不可避的に発生する。
ところが、我々の意識下では、あたかも放牧されている牛や豚が製品となった姿へダイレクト
に結びついているかのような、あたかも中の見えないトンネルを通りそこから出てくるときに
はあのような肉製品という異形になっているかのような感覚がある。僕らの社会には、その中
間のプロセスの部分と、そこで働く人々への視線が、決定的に欠落しているのだ。
本書は、そのタイトルがど真ん中直球で示すとおり、これまであたかも社会の「暗部」がごと
く扱われてきた屠場の歴史と現状、そしてそこで働く人々の悲喜こもごもをおったドキュメン
トだ。
この本が明かすのは、戦前戦後と「職業に貴賎はない」という言葉が全くの嘘八百であったこ
ということ、食肉解体とそれを職業とする人々への差別意識と差別的な待遇、そしてそれと同
時に、というかそのような外からの冷遇があった故に生まれた労働者同士の連帯感である。動
物の解体にも、やはり独特の技術があるらしく、まさに「学ぶのではなく盗め」というベテラ
ンから若手への業の伝承が行われる技術集団、ギルド的な集団が形成されているのである。
昨年からの世界的不況は、例外なく日本の工場労働者をも襲った。彼らにとっての決定的な痛
手は、雇用の流動化という世相の流れによって、この苦難を乗り切るための横のつながりがな
いことだろう。屠場には、他の職場では失われたそのような労働者同士の横の連帯感と、自分
たちの仕事への誇りが、未だ息づいている。
屠場労働という職業を差別することはもってのほか。しかしその反対に、「僕らの代わりに汚れた
仕事を・・・」と、彼らに負い目を感じるのも、同じくらい失礼なことだろう。
この本を読んでわかるのは、彼らが彼らの仕事にプライドを持っているということなのだから。
いまだに心無い偏見の残る世界 ドキュメント 屠場 (岩波新書)
禁句とも言われる屠場、そして差別され卑しい目で見られる屠場
でも、もし誇り高い彼らがいなければ私たちの食卓には
「おいしい肉」は並ばないと言うこと…
私は以前に屠場を見学したことがあるので
そういった類の偏見は持ってはいません。
しかし、いまだなお特に西のほうで卑しい偏見の目があることは
恥ずべきことだと思います。
内容も食卓に並ぶ前の工程もきちんと記録されていますし、
現場の人の声も取り入れているのでとてもよいです。
長い間心に残る本 ドキュメント 屠場 (岩波新書)
この本を読むまで食肉の屠場について考えたこともなかった。
何気なく読んだこの本で私は屠場にとても興味を持ち出した
何年も前に読んだ本なのに、今だこの本に書かれていることは、私の心に焼き付いている
食肉を消費する人なら誰しも知らなければいけないことなのにと
実感させられ、また屠場で誇りを持って働いている人たちに魅了された
知られざる世界 ドキュメント 屠場 (岩波新書)
技術の進歩とはうらはらに、およそ近代的とはいえないシステムによって続けられてきた食肉処理。こうした本がもっと出ることによって差別も逆差別もなくなっていくだろうにと思う。
社会派ルポのずしりとした内容 ドキュメント 屠場 (岩波新書)
屠場、いわゆる獣肉生産のための解体工場を著者がつぶさに取材した傑作ルポ。われわれにはまったくうかがい知ることのできない内情が詳らかにされている。屠場とそこに働く人々に対する社会的な偏見、抑圧は想像を絶するものがある。みごとな腕と技をもった職人が多数、過酷な労働条件のなかで働いているのにもかかわらず、である。われわれ消費者はこの現状を直視しなければいけない。
著者のルポは徹底的、かつ真摯で抑制が効いており、おもしろ半分の覗き見ルポとは一線を画し好感がもてる。