再読推奨 ペドロ・パラモ (岩波文庫)
本文と解説を読み終えて、もう一度読みなおしました。単に前衛的、実験的とするにはもったいない小説です。生者と死者、現在と過去の意識の断片が交互にあらわれて、ペドロ・パラモと死に絶えた町コマラに肉付けをしていきます。
スペイン語圏の作家のなかでは、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』と並び賞される作品なのだそうで。たしかにエピソードの多彩さはゆずるものの、現在の語りと過去の語りを同時進行に行うことで、コマラのなかでの時間の経過、盛衰、人の生き死や愛と罪、そして荒涼としたメキシコの現実を、たった200ページの物語に凝縮しています。最初は独特の文体に戸惑って気付けないところもあると思うので、再読してその巧妙さを確認されることをおすすめします。
ラテンアメリカ古典・・・叙述トリックの古典 ペドロ・パラモ (岩波文庫)
語り=騙りはやはりラテンアメリカでしょう。
語り=騙りは、最近はもう叙述トリックばかりですが、やはり根っこは文学にありきなのです。
あのネタもこれからぱくったのかなあ、と色々想像でき、ミステリファンも色々楽しめます。
名作は懐が深い、と感じられる作品です。
コンパクトなテキストに閉じこめられた広大な世界と歴史 ペドロ・パラモ (岩波文庫)
本書の他に短篇集『燃える平原』しか発表していない、極度の寡作家ルルフォの代表作。六〇年代における新しいラテンアメリカ文学の隆盛の前哨を成す極めて重要な作品です。
解説に「コンパクトなテキストの中に膨大な空間と時間を閉じこめる」という表現がありましたが、七〇の断片がアモルファスに集積した本書のスタイルは、まさにそのような効果を実現しています。小説としては確かに小振りですが、その世界の規模と奥行きはガルシア=マルケス『百年の孤独』に迫るほどです。過去/現在/未来、自己/他者、生/死がすべて等質に扱われ、抽象/具象を超越した斬新な表現に到達していますが、演繹的な実験ではなく自らの体験やメキシコの現実から帰納して獲得されたものであり、地に足のついた安定感と確固たる説得力があります。
ちなみに本訳は二〇年かけて何度も推敲されたものだそうです。原語との対応は分かりませんが、文章自体はよく練られており完成度は高いと思います。