しみついた人の思いを描くSF作家 レフト・アローン (ハヤカワ文庫JA)
「コスモ・ノーティス」のメタモルフォーゼ世界、「星に願いを」のサイバーパンク…実に軽やかに異世界を描き分ける。そこに必ず織り込まれる[人の思い]。
「星窪」でモチーフの一つとなった異色の日本画家・田中一村の「アダンの実」を、私も回顧展で息をのんで観た。「ハイドゥナン」の表紙の意味がわかってうれしい。
確実に「書ける」作家! レフト・アローン (ハヤカワ文庫JA)
この著者については今さら何を語るもないが、本書の読中、読後に感じるリアリティー(あるいは作中における非リアリティーまたは擬似リアリティー、簡単に言ってしまえばヴァーチャル・リアリティーということになるのであろうか)、それらリアリティーがしっかりと現実の科学に裏打ちされた骨格を持ったもので、精緻にそしてここでは作者の自由で奔放な創造力によって構築されており、作者の確かな作品創作の手腕を感じさせる。
私的には、この著者デヴュー作たる『クリスタル・サイレンス』より、歯切れがよく、「今にも手が届きそうな未来」を感じさせてくれるいずれも胸躍る短篇集であった。
近年の日本SF作品集ベスト3 レフト・アローン (ハヤカワ文庫JA)
著者は異なるが、『象られた力』、『老ヴォールの惑星』に匹敵すると謳う帯の売り文句は正に的確。過去2年のベストSFである前記二作を読んだ方は、本作を手にとって後悔することはないだろう。
表題作は著者の出世作『クリスタルサイレンス』の前日談である戦闘SF&ラブストーリィ。他の4作は、どれも趣きは異なるが純然たるハードSF。「猫の天使」は近未来猫ハードSF。「星に願いを ピノキオ2076」も『クリスタルサイレンス』後日談。「コスモノーティス」は遠未来ポストヒューマン系宇宙SF。「星窪」は『ハイドゥナン』関連の書き下ろし。著者の幅広いSF的思考が伺える傑作中篇集。