森に住む人々が訴えること 世界森林報告 (岩波新書)
世に「鬼の霍乱」という言葉があるが、本書のプロローグは「森の攪乱」という小見出しから始まる。激変した地球環境を静かに憂える筆頭人のような著者の、押し殺した呻きが聞こえてくる。これまで40年間、90回余り世界の森を歩き、生態学的な調査をした報告なのだが、そこで身に沁みた言葉・願いを読み落とさないようにすべきであろう。
消えてゆく原生林、大開発の代償…自らが被害をこうむるまでは、まじめに危険性を訴える人々の意見を無視するという傾向がある。そのための代価があまりにも大きいことは、歴史が証明しているにもかかわらず、同じ過ちを繰り返してしまうのは、人類の性なのであろうか。
枯葉作戦…地球生態系にとって許すことのできない犯罪であった。しかし、ベトナムの人は寛容である。アメリカに対して交渉はしていくが、基本的な処置は自分たちでやっていくしかないと、静かに、しかしきっぱりという。
インドネシアの森は、ひどい状況にある。30年前ならばいくらでも見られた美しい森が、今では無残な後を残すのみとなっている。そんな中に新しいエコーツーリストを開く道はあるのだろうか。
森の伐採が進むにつれ、そこに住む人の生活と文化が危機に瀕しているとされ、多くの運動が起こってきた時期と、私が世界の森を歩いてきた時期とちょうど重なる。森に住む人は貧しく、かつ純朴な人が多い。かれらの訴えは、私だけでなく世界を揺り動かした。
グリーツーリズムの実態 世界森林報告 (岩波新書)
この本では大変興味深いのはのグリーツーリズムの事例が詳しく解説されていることである。著者も論じているが、一般的に途上国では画一的なリゾート開発が自然破壊を引き起こしている。加えてグローバリゼーションの進展もあいまって完全な外貨依存の商業主義的な競争の発生し、多くの地域では破壊された環境のみが残るという事態が生じている。この状況を打開できるのがグリーンツーリズムである。グリーンツーリズムは生物多様性を維持しつつ、その重要性を広く認知させることが可能で自然保護を進める良い契機となりうるものである。実際の事例を通じて理解を深める点でこの本は大いに参考になる。