宮沢賢治作品を音でイメージ化したものには明るくてユーモラスなものも多いような気がするのですが、この作品は違います。
加古隆独特のもの悲しく、緊張感に満ちた音と、野沢那智のよく響く落ち着いた声での作品の朗読は、
美しさと同時に深い悲しみを湛える賢治世界の深淵をとてもうまく表している気がします。
賢治の短歌に始まり、『注文の多い料理店の序』に終わる構成も見事。
個人的にはトラック3の『銀河鉄道の夜』が一番好きで、そのピアノの
響きとメロディに心をかきむしるほどの切なさを覚えます。
賢治の描いた絵やイーハトーブの風景写真をあしらったジャケット、インナーも最高です。
賢治の愛した東北の奥ゆかしく謎めいた空気をとても美しくイメージ化していると思います。
ジャケットを眺めながら聴いていると、いつも心がイーハトーブへ飛んでしまいます。
月夜の晩に空を見ながら。しんしんと降り積もる雪を見ながら。東北の地を旅しながら。
賢治の世界をここまで美しく音にしてくれた加古隆さんに感服。
加古ファン、賢治ファン、ともに必聴。