この問いに答えられる教師や大人は少ないのではないだろうか。青年期とは色々な問題を抱える時期でもある。家出や犯罪など、それを著者は子供が大人になろうとする時の「つまずき」と呼んでいるが、大人から見てももちろん、当事者である本人からしてもどうして行ったのかわからない場合が多いという。
イニシエーション(成人式などの通過儀礼)が実質的になくなった現代において、大人と子供の境界線は更に薄くなり、大人になる事が難しくなった。人間関係、性、家族、恋愛に関する問題も現代においては多様化・複雑化している。これに対する筆者の臨床心理家としての実践例を踏まえた本書の展開は非常に興味深かった。
子供を批判するだけでなく、親・教師の側の誤った見解をも正している所は筆者ならではの観点であり、普通に生活している上では気付かない立場からも展望する事ができた。
つまりは人間に対し、一様な考え・解決法はありえないということであり、人間・社会が多様化する現代においては、人間を観察する時も多様な観点が必要ということであろう。原因ではなく、その意味を探る事が重要だと筆者が述べているとおりである。
学術的な文献にありがちな難しい文章ではなく、やや柔らかい文体で書かれた一冊であり、読みやすかった。しかしそれが故に物足りなさも感じたことは否めない。
この本で学べることは「大人になることの難しさ」であって、大人になるためのハウツー本ではない。が、しかし。大人がその「難しさ」を理解するだけで大人になれる子供は増えるのではないだろうか。結局、「去勢」は他人によってしか行われないのだから…