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Booksで 『高山文彦』の検索結果は[ 全 30件 ]    1 / 3ページ   次のページ

火花―北条民雄の生涯 (角川文庫) 高山文彦
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火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)



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いのちの初夜とは、一味違った作者像が見れる        火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)
命の初夜の北条に対して思い入れが深いと、
施設に執筆用の空間を確保してしまうなど、
施設の暗さが描かれていない部分は、どうもしっくりこないが
一人のハンセン病の患者の障害を追ったという捕らえ方で本書を読むと
大変興味深く読むことが出来る。
高山文彦のフィールドワークしながらの人物記はいつもながら、対象者への深い愛情を
感じる。

北条の生家を訪ねたときに、いまだにその地方の村の人からハンセン病という事で
迫害され、隠され、誰一人、北条の存在について知らなかった事実は衝撃的にさえ
感じた。
文学が「人生の指針」であった時代の物語        火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)
 関川夏央は『座談会 明治・大正文学史』(岩波現代文庫)の解説で、座談会がはじまった1950年代後半にあっては、「文学というものが日本の知識青年と知識壮年にとって生きる上での手がかりとなっていた、つまり文学がまだある種の『実用品』であった」と書いている。その関川が谷口ジローと組んで世に問うた「『坊っちゃん』の時代」五部作が、国家と個人の深刻な乖離が兆す時代の文学のあり様を描いた作品であったのに対して、高山文彦の『火花』は、文学が「人生の指針」であった時代の後半、大正期教養主義以降の「商品」(娯楽や癒しのタネではなく、社会意識や感動をもたらす実用品)としての文学が兆す様を描き切っている(北条民雄の「いのちの初夜」が掲載された『文學界』昭和11年2月号は、創刊以来の売れ行きを示し、雑誌廃刊の危機を一時免れた)。それはまた、柳田邦男が解説「いのちと響き合う言葉」で書いているように、文学の言葉が密度の濃い「生」の実存を映し出す力を失っていなかった時代の物語である。著者は本書で「文学というもの」の近代日本における輝きの実質を余すところなく叙述すると同時に、その静かな挽歌を奏でている。
じわじわと胸にくるノンフィクション        火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)
夭折し、忘れられた天才にして被差別者の生涯をていねいに掘り起こす。こういった手法で書かれたノンフィクションはこれまでに数多く存在したことでしょう。しかし、著者・高山氏のただの凡庸な伝記に終わらせない力量・努力を感じました。

まず、叙述について。序章には心惹かれるものがあったものの、第一章から第三章までは、いくら事実を正確に記述しなくてはならないノンフィクションでも、もうちょっと感動的な叙述にできないものか、と思っていました。しかし、「第四章 わが師 川端康成」あたりから、主人公が社会から隔離された不幸から文学によって立ち直り、文壇・世間に認められていく喜びや、わずか三年半の作家生活で志半ばのうちに息絶えていく無念を、わがことのように追体験できました。
次に、歴史的背景について。ハンセン病隔離政策の歴史、主人公が寄稿した『文学界』とその周辺など、医学史、文学史の領域にかかるサブストーリーまでていねいにおさえられています。とくにハンセン病についてたいへん勉強になりました。

最後に、序章と終章とで、主人公を直接知る唯一の生存者に語らせるという構成について。著者・高山氏は、主人公の生涯を読者のわれわれに追体験させることに心血を注いでいます。しかし、最初と最後を直接の知人のことばに委ねている。追体験は現実の体験とはちがうことを自覚していらっしゃるらしいことに好感をもちました。

どうしようもない逆境でも不屈の闘志で立ち向かっていけば、報われないかもしれないが、でもまったくのむだでもない。そういうことを伝えようとする人道主義的な配慮のある作品にぼくはとても弱いので、五つ星です。

真摯な評伝。        火花―北条民雄の生涯 (角川文庫)
本書を一読してまず気付かされるのが、
川端康成のこまやかな気遣いである。
川端の書いた北条の死を巡る作品「寒風」は、
ハンセン病という当時は不治の病として恐れられた業病と闘い、
夭折した作家として北条民雄を冷静に捉えている。
決して見下ろしたりまた変にもちあげることなく。

今北条民雄と聞いてどれだけの人が知るのだろう。

それでも彼の残したわずかな作品群は時を越えて残りつづけていくことだろう。

評伝の著者高山氏の北条への熱意は、本書の読み手に直接的に揺さぶることだろう。

そして、一人でも多くの人が北条民雄文学への興味をもつことを願ってやまない。


孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人 高山文彦
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孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人



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新潮45連載中はワクワクした        孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人
新潮45連載中はこの作品を読むのが楽しみで
ワクワクしながら読んだものだ・・・でも、3話ぐらいまで読んだ後、
そもそもその雑誌を買わなくなったので、その後の話がずーと気になっていました

連載を読んだ人でも大きく構成を変えてあるので読めると思いますが、ワクワク感はありません。自分の出生を知る事が非凡な幼児期をおくって来た物にどんな作用を与えるのか
考えさせられました。ただ、本当の事はわからない、私は当時は知らなかったけれど、
当時の新聞記事などを読んでジョセフィン・ベーカーについて少しでも関心を持った人には
とても、興味深く読む事が出来るだろうと思いました。
私はあいにく彼女の事を知りませんでした、でも、文中から彼女の魂に響く歌声と、子供たちの魂の叫びが、読書中音楽として聞こえたような気がしました

しかしながら高山文彦の作品としては、ちょっと物足りない、水平記や火花のように作者の心に入っていけない、もどかしさを作者も感じ読者も感じるけれど、もしかしたら
今も生きている13人を書くのだからこそ、そのもどかしさこそ作者の書きたかった事かもしれない

「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫) 高山文彦
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「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)



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やっとカウンセリングを受けてくれると思い、ほっとしていた。        「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)
 神戸連続児童殺傷事件の少年逮捕から一年後に発表された記事を基に書かれた本です。
 少年の家族や、学校の関係者などから取材して、事件や少年の生い立ちを記してあります。
 親から見た少年像、学校側から見た少年像、そして同級生との会話などが描かれてあり、その像の違いにに驚かされました。
 母親が学校に「しばらくのあいだ休ませようと思います。」と告げに行った際
面会した担任教師と生活指導担当の教師は
 『やっとカウンセリングを受けてくれると思い、ほっとしていた。』
と記されています。
 学校側では、長い間「児童相談所でのカウンセリングが必要な生徒」と認識していたのに対し、
 親は「男の子のことだからそんなに心配しなくてもいいでしょう」というかかりつけの病院の院長のアドバイスを受けて、思い悩まないようにしていた
と書かれています。
 伝説となっていた「教師への暴力」や「教師からの暴力」について「はそういう事実はなかった」ことを取材たうえで掲載されています。
 冷静な文章で読みやすく、納得する事柄が多く記されている本でした。 
読みづらい        「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)
事件のことや少年Aのことを知りたいと思い、情報がほしくて買ったのですが自分には
文章に、よけいなことを書いている部分が目立って回りくどいように思えました。
かっこつけて書いてる感じでなんか読んでいてすごいめんどくさくなりました。
少年Aに関する情報だけを読みたかった自分にとっては著者の文章力とか感傷には興味がないので
あまり関係ない重要でないところは簡潔に、もっと読みやすくしてほしかったと思いました。
ノンフィクションとしての評価は低いかも。        「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)
 同級生の女の子を殺害して逃走中の容疑者−それが少年であったが故に、警察は公開捜査すら出来なかった−の名前を「週刊新潮」が顔写真入りで報じた。

 少年法について改めて考えさせられる事件でした。過去の事例を知りたくて、この本を手に取りました。

 膨大な資料と取材を元に執筆されたことがうかがい知れる「神戸連続児童殺傷事件」を追う人には必読の書。

 しかし、著者の思い込みや創造?想像?が多い点が気になります。「私が思うに、少年はきっとここに来たに違いない」とか「少年もこれをきっと見ただろう」など推察が目立ちます。少しドラマッチックに描こうとしすぎでは?という印象です。

 あと、少年Åの描いたイラストや、犯行メモの掲載が無いことも欲求不満にさせられました。前著「地獄の季節」で掲載していたのでしょうが、再掲載するくらいのサービス精神(?)が欲しい、と感じました。
酒鬼薔薇という脆弱な神        「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)
風化の一途を辿る世間の記憶、もはやこの神戸連続殺傷事件について詳しく覚えている人はまれだろう。
また当時様々な情報が錯綜していたこともあり、中には虚偽の情報も多かった。
-例えば「鬼薔薇」という曲が存在し、詞に野菜や大怨といった言葉が使われている-
といったものなど、そういったデマの最たる物だったと言える。

あえて今この事件を見つめ直すということはこういった誤情報や当時の感情的世論に惑わされることなく、
ありのままの酒鬼薔薇聖斗を発見することができるということだ。
またそういった人にとって、この本は必携と言って良いだろう。
著者は独自の見地に立ちながらも大枠は第三者的視点に立っており、なにより

事件の事実関係に添って執筆されているために誤った情堡?や妙な先入観を持つ恐れが少ない。
酒鬼薔薇聖斗の両親、また不運にも被害に遭った少年の父親が執筆した本もある。
しかし事件に直接関わっていない者が執筆したという一点に置いて、この本は
「酒鬼薔薇聖斗」というムーブメントを理解する最初の一歩として絶好なのである。

酒鬼薔薇聖斗と同年齢の若者が17歳になって立て続けに起こした一連の17歳事件。
あれらの事件の犯人達はみな酒鬼薔薇を神と崇める傾向があるという。
酒鬼薔薇聖斗という歪な闇が支配する世界に入ったとき、あなたの脳内宇宙にも
この14歳の少年を崇める意識が生まれるかもしれない。

そんなときひょいと気を抜くと、あなたは「あちら側」の人間になってしまうかもしれないのである。
あなた自身の心の闇を見つめるためにも、この本は役に立つだろう。

捜査の記録が詳しい        「少年A」14歳の肖像 (新潮文庫)
酒鬼薔薇少年の両親が書いている本、淳君の両親が書いた本の両方を読みましたが、2つともどのように犯行が進んでいったかは書かれていませんでした。又親から見た息子を書いている為、第3者から見た事実は書かれてはいない。
この本はその犯行の手口、実は周囲では犯人がAであることが分かっていたなど、両親には公開されていない内容が書かれている。

地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫) 高山文彦
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地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)



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著者の内的告白?        地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)
単に事件の真相を知りたいだけなら、別の本を読むべきだ。しかしわたしにはそこらの小説などよりよほど面白かった。誤解を恐れずに言うなら、ある意味で著者の内的告白というか、内面への旅という気がした。
それは単につぶやいているという        地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)
たとえば同じプランターにタネを蒔いて、ひとつだけ突然変異ができたとする。
すると、その原因をつきとめるには、場所や温度や土や肥料をひとつずつ変えながら、何回も何回も同じ実験を続けてみなければならない。
それでも、原因などつきとめられないかもしれない。
そして、対象が人間である場合には、実験することはできない。
できるのは、類似の特長をもつサンプルが、どのように成育していったか、追いかけて統計をとってみることである。それは三浦展のようなマーケティング専門家などが世代分析に応用したりしている。
この事件の場合、両親がどうだから、地域がどうだから、と「少年A」という点を追及していったって、原因をかすめたことにさえならない。
それをするならば、できうる限りの、両親と同じ出身地で同じ学歴で同じ世代の両親をもち、なおかつ兄弟構成が似ていて長男である子供の犯罪発生率を居住地域別に探ってみなければ、意味がない。それをしないで、「なんとなくあそこの街はよくない雰囲気だった」とか、「母親が長男に厳しすぎた」とか言ってみたって、それは単につぶやいているというレベルの話である。
「隠れ場所のない街」なんてものは全国どこにだってある。それをAの異常性の原因のひとつにしたいのであれば、「ここ以外の隠れ場所のない街」で類似の犯罪が起こっているかどうか、なぜ調べないのか。
母親の態度も原因なのではないか、と思うのであれば、もっと厳しい母親の子供が犯罪を起こしているかどうか、なぜ調べないのか。
突然変異の原因は、「突然変異」ということでいいのだ。「実験」などできないのだから。
これはこの子の特異性であり、それ以上でもそれ以下でもないと思う。
…「私はこう感じた」というだけのものが本になっているからといって真に受ける人がいると困る。
無駄に厚いとしか思えない        地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)
著者のどうでもいい感傷が多すぎる。
少年Aの血の故郷などは、確かに他の著書には
書かれていない貴重なものには違いないが
「少年A」自身について、また事件について知りたくて読む人には
正直言ってその描写は退屈以外の何者でもない。
我々が知りたいのは事実だ        地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)
「マリス(悪意)を排除せよ」とは、メディアに従事する者(報道者)が、まず守らなければならないことですが、著者の主張には「〜に原因があるはずだ」という強いマリスを感じます。インタビューをした際に、回答者が答えた内容に対して「彼らはこう言っているが、本心では〜だと考えているに違いない」という主張には閉口しました。

また、著者自身が「報道被害」の加害者になっています。
散見される「インターホンを何度も鳴らした」「ドアを叩いて」「居留守を使っているのが分かった」という文章には唖然としました。

最後にルポルタージュの定義を。(大辞泉より)
reportage
文学の一ジャンルで、社会的な事件などを作為を加えずに客観的に叙述するもの。

ぞっとした。        地獄の季節―「酒鬼薔薇聖斗」がいた場所 (新潮文庫)
第一章、二章の、あまりに閑散とした須磨ニュータウンの様子が一番怖かったし、全編を通してその光景がいつも頭に焼き付いていた。

エレクトラ―中上健次の生涯 高山文彦
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エレクトラ―中上健次の生涯



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圧倒された評伝。        エレクトラ―中上健次の生涯
これまでも何作か評伝を読んだことがあるが、これ程に圧倒されたことはかつてなかった。
中上建次の作品も何作か読んでいるが、それらの作品がどのように生まれ、編集担当者との壮絶なやりとりの末、完成されたかを知ると、もう一度中上作品を読み直さずにはいられない。
無頼派、豪放磊落、破滅的な作家とならした中上健次も、この作品を読むと、物悲しくもあり、家族も愛した普通の男の一面も理解でき以前よりもう少し身近な存在となりえた気がする。
あの時代、あのような出自を背負い生きた男の足跡を、著者はしっかりと描き追った渾身の評伝である。中上作品を読んだことのない読者にもお奨めだ。
“中上健次に迫る道標”といってもよい        エレクトラ―中上健次の生涯
私自身の中上健次との出会いは「地の果て 至上の時」。
そこからさかのぼって作品を読んで行く方向と、
作品をリアルタイムで読んでいく方向との2方向で付き合ってきた。
作品世界の豊饒さと読み解く順の交錯とで、より豊かさが広がったと思っている。

中上健次のあまりにも早い死は衝撃だった。
それだけに、「第11章熊野に死す」は静かで悲しかった。

レビューにもある通り、作家は作品で評価するのが第一ではあると思う。

しかし、中上健次を読みたい人に何を読んだらよいかのアドバイスは難しい。
これまでまったく読んだことのない人ならなおさらである。

一人でも多くの人に、中上健次に出会ってもらうためには、
本書のように、それだけで読み応えのある評伝は必要なのだとあらためて感じた。
本書を読んでもらうのも、中上健次に迫るひとつの道になるのではないかと思えた。


中上健次を評価するとすれば、純粋にアウトプットで評価せよ!        エレクトラ―中上健次の生涯
 読み応えのある評伝だった。読み物として面白かった。
 「これを書かなければ生きていけないというほどのいくつもの物語の束をその血のなかに受けとめて作家になった者がどれほどいるだろうか」って言葉が出てくるんだけど、ここの捉え方はかなりセンシティブである。もちろん書くことがある人はいくらでも書けばいいんだけど、じゃあ、書くことがない人は書く資格ないのかよ、っていうさ。人には、書くこともないのに物書きになりたいとか、芸もないのにタレントになりたいとか、そういう有名性やドラマ的人生への欲望ってあると思うのだ。「ダメ親だったらグレられたのに...」みたいな本末転倒。語りたいことの有る無しじゃなく、「語りたい」というそれ自体の欲望。ほら、古くは太宰なんてのは、「語りたい」がために共産党活動に身をやつしたり、自殺未遂や心中を繰り返したりしたんだと思うんだよな。つまり自分の人生ってコンテンツが豊饒であるってことを世の中的に刻んで死んでいきたいって欲望。それって意外に本能と直結してる気がする。
 そりゃぁ中上健次ってはこの評伝通り、その人生も過剰なくらい豊饒なんだけど、やっぱ評価すべきはその「語り」である。ほら、書くべき人生が無くたって、書かれたものが面白いかどうかが勝負なわけでさ。中上自体もそこに拘っていたと思うんだよな、出自に拮抗した語り。もちろん書くべきことがないのに、面白いものが書ける確率ってかなり低いだろうけど、逆にそれって才能だし。実人生=物語ってアナロジーじゃ、実人生が豊かじゃない人はやってられない。今のブログ隆盛なんてのは、実生活と別の人生を作れることの可能性、もうひとりの(ドラマチックな)自分を生きることへの欲望だもんね。とはいえ読むほうは、それがウソだろうとマコトだろうと面白けりゃいい訳でさ。もとい、中上健次を評価するとすれば、純粋にアウトプットで評価せよ!ってことだ。
文学って、苦行なの?        エレクトラ―中上健次の生涯
 今や伝説となった中上健二の評伝です。著者によれば、
フーテン、薬物依存、そして被差別部落に学生運動と、
同時期に青春時代を過ごした者ならどれかに思い当たる
ような経験を、彼はフルコースで演じていたとのこと、その
人の人生が後に神格化されたのもむべなるかなと思いま
した。
 被差別部落で非嫡出子として生まれ、母親が他の男と
婚姻すると共に姉達が離散、後には兄も自殺してしまう
という、その運命の客観化を生涯のテーマとした彼ですが、
結局は自らの家族に救われたように思います。エピロー
グに収められた次女あての私信は、人生の先輩としての
成熟した暖かいまなざしとわが子への深い信頼で満たさ
れていました。
 マグマがたぎるような熱い小説への想いと、憑かれた
ように故郷、熊野を語りの海として再生しようする姿勢は、
いずれも稀有のものだったのでしょう。しかし、とわたしは
思うのです。人は小説を書くことに、これほどまでに苦しむ
必要はないのではないかと。
 例えば、最近読んだ近藤史恵『サクリファイス』は、肩の
力を抜いた筆づかいで、読後の爽やかさを感じさせたし、
玉岡かおる『お家さん』や伊坂幸太郎『ゴールデンスラン
バー』はフィクションを楽しみながら神戸や仙台という地域
の息遣いを感じることができました。それで、いやそれだ
けでもいいのではないでしょうか。
説得力あり        エレクトラ―中上健次の生涯
作家中上健次の、生い立ちから作家として世に出るまでを、二人の編集者との交流・対峙を軸に描いた評伝。根は大人しい性格ながら、複雑な出生と家庭環境、兄の自殺、少年期のいじめ、親族間の殺人事件などの事実を自身の中に溜め込んでいくにつれ、抜き差しならない思いを腹の中に抱え込むようになった作家の人生が説得力をもって語られます。中上健次がなぜあれほど濃密でずしっしりと重い作品を描き得たのか、斬新としかいいようのない表現力をどうやって獲得したのか、本書を読めばあらまし理解できます。

鬼降る森 高山文彦
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鬼降る森



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神話とは何か        鬼降る森
著者はもはや、この心の故郷に地の者として帰ることはできないであろう。
観光ブームによる天孫降臨伝説の観光地として成り立っている現実の村と、
著者の記憶にある昔の村との乖離は大きい。
今日、夜ごとに繰り広げられる鬼達の狂乱の踊りとは、観光客達のお金が
観光資本として村に投下されるための受け皿に成り下がってしまった。
かつて神聖な祭も、今や旅人たちへ走馬灯のごとき一瞬の悦楽を提供する
ショーへと変化を遂げた。過去は変えることが出来ないが、現在もしかり。
神楽の行われる神社の外には客用マイクロバスの群れがまっている。
それでもかつて神話はあったんだ、と旅人だった自分は信じたい。
なぜなら、「高千穂峡谷」や「おがたまの木」は未だ神話性を遺しているからだ。

森の息遣い        鬼降る森
作者のもつ故郷への愛と執念がうかがえる、高千穂風土記。
思い入れが強いだけに少し偏っているように見えるかもしれませんが、これだけの想いを持つことのほうが大切でしょう。
失われてしまった土着文化と人々の息遣いを、少しでも取り戻すことができるのが本著ではないでしょうか。九州の森奥深くに生まれ、消されていった神話、鬼、唄。とても興味深いです。ワクワクしながら読みました。
また、アスファルトに飲み込まれた故郷を持つものにとっては胸が痛くなるほど共感できる部分が多くあります。読み終わった後、故郷に飛んで帰りたくなります。
物を書くことを生業としている方が自らの故郷についてこういった本を出されるのは、とても意義深いことだと思います。
時の流れていない・・        鬼降る森
著者と同時代に、同じ町で過ごした私にとって、高千穂はこの本の中と同じ景色で今も在る。都会に暮らして20数年経つが、あの町で育った様な種類の人に出会ったことがない・・・腹が立つのを忘れるほど自由で、人が生きて死んでゆく事を自然に識っている人達。伝説の解釈は様々だが、生きている人達を見れば『根』から どう『枝』が伸びていくのかで理解できる。 実は・・後生に残そう等と言う事も望んでいない『伝説』を現実として生きている町が・・在る。
心地よい陶酔が味わえる        鬼降る森
作者の故郷をめぐる体験と考察。
夢のような神話と土地の民の願望を絡み合わせる作者の思考は巧妙だが
一抹の胡散臭さが漂う。都合よく解釈しすぎではないのか?
高千穂が完璧な理想郷として存在しすぎているし、負の歴史に飲み込まれていった者達への労わりが自分本位であると感じた。

しかし外部の者が何と言ったところで、その土地を愛する作者の気持ちに割り込むことは出来まい。
夢物語としての出来は良く、陶酔して読むことができた。

「帰りたい」        鬼降る森
「帰りたい」この言葉は、作者が本書の帯に書いている、数行の文章の最後に書かれている言葉です。
読み進むうちによく作者の気持ちが判るようになりました。
故郷(宮崎県高千穂町)を愛する気持ちが文面から伝わってきます。

内容にしても、単なる天孫降臨伝説の読み解きではなく、その裏にある征服された土着の人々の生活を丁寧に描いてあり、興味深いものでした。


水平記 下巻―松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年 (3) (新潮文庫 た 67-4) 高山文彦
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水平記 下巻―松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年 (3) (新潮文庫 た 67-4)



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水平記―松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年 (上巻) (新潮文庫 (た-67-3)) 高山文彦
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水平記―松本治一郎と部落解放運動の一〇〇年 (上巻) (新潮文庫 (た-67-3))



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運命(アクシデント) 高山文彦
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運命(アクシデント)



定価:¥ 1,700 (税込み)
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栄村はもっと深く悩んだのでは?        運命(アクシデント)
人気球団巨人の将来を嘱望された吉村が大怪我を負い、その後、復活したことは記憶に残っているが、一方で怪我を負わせた選手については、栄村という俊足の選手であることしか覚えていない。

本書はその栄村へのインタビューの他、アクシデントに見舞われたスポーツ選手に対するインタビューである。
栄村に対しては、批判と同情が向けられたことは想像に難くないが、彼がその後どのような野球人生を送ったか、何を考えながら引退したかに興味をいだき、この本を手に取った。

が、栄村へのインタビューは期待はずれであった。まずもって、栄村からみたあの事件の考察が少ない。
例えば、守備範囲の狭い吉村と俊足の栄村であれば、当事者間だけではなく、首脳陣となんらかの合意形成があったのではないか?
栄村は何で怪我を負わせることになったのか、技術的側面、作戦的側面、当時のシチュエーション等を繰り返し思い出し、何かに救いを求めることと自分を責めることを繰り返していたのではないか?

にもかかわらず、本書では、初めての一軍で舞い上がって激突し怪我を負わせたと片付けられている。
事件の原因に対する記述が少ないため、栄村がその後の人生で自問自答しつづけたであろう、野球観には踏み込めていない。

ミラコロ 高山文彦
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ミラコロ



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日本の地方がもつ「におい」を求めて        ミラコロ
私は日本のそれぞれの地方がもつ、独特の「におい」が好きだ。
においというのは、他の言葉ではうまく表現できないのだが
何と言うか、地縁や血縁がからみあうことによる独自の雰囲気とも言えるかもしれない。

中上健次の小説を読んですぐに和歌山県新宮市へ飛んでいったのも、
中上小説から湧き上がるにおいを求めてのことであった。
もちろん、現実の新宮と氏が小説で描いた新宮とは一致しないし、
現実の新宮は、もっとあっさりした今風の都市の一つであって、
独自のにおいを感じ取ることは困難だ。
しかし、そこに住む人と話し、交わるに従い、次第に「におい」が感じられるようになる。

前置きが長くなったが、宮崎県高千穂町を訪問した後、この本を読んだ。
神話で有名な観光のまちが、本当はどんなにおいを発しているのか、知りたかった。

確かに、ローカル鉄道の車内という限定された空間に、様々な人生を背負った地元の
人々を複線的に交差させる様は巧みである。
しかしあと一歩、何か物足りなく感じた。
私には、映画“ひまわり”の引用などが何かしら、よそからの借り物のような気がして、
土地の「におい」を薄めるように感じた。

また、前半に出る回想シーンで、高校時代に校舎ウラで授業をサボって煙草、というのが
使い古されて安っぽく感じた。この時点で読むのをやめようかと思ったくらいだ。
中上小説では、徹底的に「内側」を見る視線が、その土地や人物の内部で反射し、
大きく外側へ投影されているように思う。
「におい」を徹底的に追求し、そのにおいを嗅ぎ当てることで、
他にも通じる普遍的な真実をあぶり出すのである。

一方でこの作品が「におい」を徹底的に追えているかというと、
半分地元にこだわり、半分は地元らしさを装った他からの借り物という感じで、
そのため純文学でもない、娯楽小説でもない、中途半端な感をうけた。
丹念な描写に引き込まれる        ミラコロ
TV番組制作に携わる37歳の主人公が、郷里の映画館で行なわれる最後の上映会に来ないかという高校同級生の女性からの誘いで高校卒業後一度も訪れていない郷里へ向う。道中の列車で同乗する人々との出会いの中で、郷里を避けていた主人公の記憶が次第に甦り郷里へのわだかまりが解けてゆく。
 ともすれば都会生活者の一方的な甘ったるい郷愁で終わってしまうようなストーリーだが、同乗する人々の描写が丹念であり、小道具(映画「ひまわり」、食べ物、景色等)の使い方が上手く読ませてしまう。著者の構成力に感服。
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